Reuters
発行済 2020年09月03日 12:23
更新済 2020年09月03日 14:45
[ロンドン 2日 ロイター] - ドイツ政府が2日、ベルリンの病院で治療を受けているロシアの反体制派、アレクセイ・ナワリヌイ氏への襲撃に使われたと発表した神経剤「ノビチョク」は、1970年代から1980年代に旧ソ連で開発された。一体どのようなものなのか。
・名前はロシア語で「新参者」という意味。猛毒の神経ガスが用いられており、より有名なVXやサリンとは化学構成がやや異なる。
・ノビチョクは、VXやサリンの5─10倍の致死性があるとみられている。2018年に英国でロシアの元スパイとその娘が襲撃された事件で登場したが、それ以前に使用された例は見当たらない。
・ロシア政府はノビチョク、ないしその原材料について、オランダ・ハーグにある化学兵器禁止機関(OPCW)に正式に申告した形跡はない。
・いかなる化学物質であっても軍事目的で使用してはならないことは、1997年に発効した化学兵器禁止条約(CWC)で定められ、ロシアもこれに署名している。
・昨年11月にはOPWCがノビチョクを含めた規制対象の拡大を目的とする「特定禁止物質リスト」を改正することで合意し、今年6月7日に発効した。
・米国の化学兵器専門家、エイミー・スミスソン氏によると、ノビチョクは農薬の原料にもなる物質で組成されているため、製造に際して合法的な民間産業が隠れみのに利用された可能性もある。
・かつてロシアと米国は世界の2大化学兵器保有国だったが、ロシアは昨年、OPCWに化学兵器を全廃したと報告。米国は廃棄手続きの最終段階にある。
・ただ、1990年代にノビチョクの開発や試験の動きが明るみになったことで、米国は旧ソ連に密かに保有する化学兵器があり、OPCWに加盟した際に保有分を全て申告しなかったのではないかと疑っている。
・米国に拠点を置き、大量破壊兵器の脅威を減らす取り組みを行っている財団「核脅威イニシアチブ」が2014年にまとめた報告書に基づくと、ロシアは一時、ノビチョクやその関連物質に由来する化学兵器を何千トンも保有していたとみられている。
・英レディング大学で薬理学を専門とするゲーリー・スティーブンス教授は、ノビチョクの毒性は「心臓の働きを鈍らせるとともに気道をふさぎ、窒息状態に陥って死に至らしめる」と説明し、各原材料が禁止リストに含まれなかったことが、開発された主な理由の1つだとの見方を示した。
・英国は、2年前に南部ソールズベリーで、かつてロシアのスパイだったセルゲイ・スクリパル氏と娘のユリアさんに対して、ロシア側がノビチョクで毒殺を図ったと主張している。スクリパル氏とユリアさんは一命を取り留めたが、巻き添えで1人の英国人が亡くなった。ロシアは一貫して襲撃への関与を否定している。ソールズベリーでは除染や原状回復などの作業などの費用が数百万ポンドに上った。
*本文中の誤字を修正して再送します。
が書いた: Reuters
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