8月15日は、インドが1947年にイギリスから独立してちょうど70年。
同国の4000年以上にわたる歴史のなかでも重要な節目だったはずですが、あまり目立たないのは、経済の目覚ましい発展がその話題性を退けているからなのかもしれません。
インド独立の父、マハトマ・ガンジーが帝国支配していたイギリスを非暴力で撤退させた史実は、あまりにも有名です。
戦時中、アジアにおける日本軍の行動を痛烈に批判したメッセージ「すべての日本の方々へ」でも非暴力による抵抗の正当性を訴えていますが、その迫力に気圧されます。
最終的にはパキスタンと分割され、ガンジーの目指した「1つのインド」は実現しなかったものの、1947年8月15日に長年の悲願だった独立にこぎつけました。
しかし、独立しても夢のような日々が待っていたわけではありません。
初代首相のネルーは在任中に病死、長女のインディラ・ガンジー、インディラの長男のラジブ・ガンジーはいずれも暗殺と、独立後の第1ステージは苦難が続きます。
転機は1991年、イラクによるクウェート侵攻でした。
原油価格の高騰でインドは深刻な外貨準備不足に陥り、国際収支の改善を迫られました。
当時のラオ政権は、長年の統制型の経済政策から外資導入などを柱とする自由化路線へと舵を切り、それが今日の経済発展につながったのです。
インドは「世界最大の民主主義国家」と言われることがあります。
13億人あまりの人口は世界で中国に次ぐ規模ですが、中国の共産党独裁と異なり、連邦議会と州議会の選挙が定期的に行われ、その結果をもとに政権を発足させるという民主主義の手続きが機能しているためです。
1996年以降はインド国民会議とインド人民党の二大政党による政権交代が続いていますが、与野党が入れ替わっても1991年以降の自由主義経済の根本は引き継がれているようです。
90年代以降はインド独立後の第2ステージといえるでしょう。
2004年から首相を務めたシン氏は、ラオ内閣で蔵相として経済再生に尽力した元経済学者でした。
そのシン政権下でインド経済はピークを迎えます。
2008年のリーマン・ショックの際は世界的な景気後退や投機資金の収縮などの影響を受け、成長率はそれまでの7%台から5%台に低下したものの、その後は盛り返し、2010年には2ケタ成長を達成。
内需主導で盛り上げ、海外からの直接投資などを呼び込んでさらに拡大させる成長パターンが定着します。
ただし、格差の解消という課題は残されました。
2014年の総選挙で、シン首相率いる国民会議は汚職などへの批判が高まり、結党以来の大敗を喫しました。
現在のモディ首相は、就任以来60-80%の驚異的な支持率で高額紙幣の廃止などの思い切った改革を進めています。
今年3月に実施された地方議会選挙でも同党は躍進。
2019年実施予定の総選挙で早くも圧勝が見込まれ、政治の安定を期待したルピー買い・株買いが強まっています。
ただ、ある調査の所得層別人口をみると、インドの場合、人口の4分の3弱は年間の可処分所得が55万円に達しない低所得者層と指摘されています。
貧困の問題は依然として同国の大きな課題です。
今年6月に行われたイギリスの総選挙で労働党が与党・保守党を過半数割れに追い込んだように、世界的には新自由主義を修正する動きが広がりつつあります。
下位カースト出身のモディ首相こそ、貧困対策の政策に説得力を持たせることができるのではないでしょうか。
インドは独立後の第2ステージから第3ステージへ移行してもおかしくありません。
(吉池 威)
アプリを入手する
Investing.comで、世界の金融市場の最新動向をチェックしましょう!
今すぐダウンロード